上腹部症状

上腹部症状は胃が原因だけとは思い込まない方がいい


上腹部症状で胃カメラを調べれば、大丈夫とは言えない。
時に膵臓、胆嚢、総胆管などの腹部臓器が原因のときは胃カメラでは病気の原因が診断できず、エコーや血液検査が有用なこともある。まれに急性心筋梗塞がみぞおちの痛みで発症することもあり、注意を要する。

上腹部痛、胃もたれ、吐き気、食欲がない等患者さんがクリニックに胃カメラの予約をして、胃カメラだけ検査。
「問題がないので、薬で様子をみましょう・・・・・・・」でもちょっと待って下さい。

上腹部症状に対して胃カメラをすることは大事です。
食道、胃、十二指腸を観察できますし、それで原因が特定できることも多いです。
でも原因は別のところにあることもあるのです。
実際筆者が担当した症例で説明してみましょう。


院長 院長


13年前に胃がんで胃全摘術を受けた65歳女性が3ヶ月前から吐き気を訴えて来院されました。まず血液検査、エコー(腹部超音波検査)、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)をしました。
まず矢印の先の黒い管が膵臓の管である主膵管ですが、かなり太くなり異常です。赤いカラーのところは動脈です。
主膵管の下流にわずか11.9mmの腫瘍がありました。この病気はIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)というそんなにめずらしくない膵腫瘍です。この患者様は手術を受け、症状は消失して、命も助かりました。
ちなみに血液検査での腫瘍マーカーはCEA,CA19-9ともに正常だったため、胃カメラと血液検査だけでは病気の発見には至らなかったと思われます。


81歳女性、1年前から上腹部痛 診断 膵がん(膵管上皮がん)

院長
膵臓の腫瘍を例に胃カメラでは発見に至らない上腹部症状を伴う症例を提示しました。他に胆嚢(胆石など)、総胆管(総胆管結石など)に原因がみられることもあります。最後に心筋梗塞もまれに上腹部症状(みぞおちの痛み)で発症することもあります。
筆者は総合病院の消化器科で専門外来をすることが長かったですが、毎年2-3人くらいでしょうか。循環器科に行かないで消化器科に来られる心筋梗塞の患者さんに遭遇しました。
以上、上腹部痛の原因が胃カメラではわからないこともあることを説明致しました。